あかいくるま


あおいくるま


きいろいくるま



きみはなにいろのくるまがすき?





(赤に青に黄色か、そんなカラフルな車なんかあんまり作らなかったな)



ワーゲンが口ずさむ歌を聞き流しながらベントレーは再び目を閉じた。

アウディが洗濯物の皺を伸ばす音が聞こえる。

不定期にぱんぱんと響く音とワーゲンの歌がおぼろげで心地良い。

開け放った窓から湿った土の香りがするのはランボルギーニの庭いじりが原因だろう。

ベントレーは枕にしていたクッションに顔を埋めた。



今日から君のボスになったワーゲンだよ、よろしくね



初めてワーゲンに会った時は本当に驚いた。

ロイスの元に仕えていた自分がこんなことを言うのはおかしいかもしれないが

こんな子供がボスなのか、としばらく固まったのを覚えている。

島国で暮らしていたベントレーにとって大陸出ばかりのワーゲンファミリーでの生活は楽なものではなかった。

そんな自分を助けてくれたのはアウディだったし、元気付けてくれたのはランボルギーニだった。

そして何より



「ベンちゃん?」

「黄色い車が好き」

「わぁ…いきなりだねぇ、びっくりしちゃった」



目の前を通ったワーゲンを何となく捕まえて抱き締める。

自分の腕の中にすっぽり収まるボスを見つめながらベントレーは珍しく表情を緩めた。

ワーゲンの存在自体がベントレーにとっての救いそのもので



「ワーゲン金髪だから」

「だから黄色なの?」



この笑顔も、口元を埋めた蜂蜜色の髪も


だいすきなのは、

(じゃあベンちゃん次の車は金色にする?)